『田園の詩』NO.52 「夏草の里」 (1996.8.20)


 梅雨の時期ほどではありませんが、雑草の生命力は逞しく、家や田圃や畑の周りは
すぐに夏草が生い茂ってきます。道も狭いので、車の離合もできないくらいになります。

 昔なら、鎌で草刈りというところでしょうが、今の田舎ではそんな光景はほとんどあ
りません。エンジン音を響かせながら、爪状の刃が付いた円盤を回転させて、草をどん
どん切っていきます。


       
        我が家の、背負い式≪草刈り機≫です。以前より随分軽くはなりました。
         広い所は二人でする方が早いので、2台あります。向こうが小さく見えますが
         同じ大きさです。          (08.11.28写)



 この≪草刈り機≫は、交通手段として≪自家用車≫が必要なのと同じくらい、田舎暮らし
の必需品といえそうです。何故なら、これがないと山里は夏草に埋もれてしまうからです。

 ただ、この草刈り機は鎌に比べたら仕事量は数段上ですが、その代り、とても危険なも
のです。不注意による事故の話をよく耳にします。ですから、草刈り機を安全に取り扱う
には、それなりの能力を必要とします。

 「あそこの爺さんは、まだ草刈り機を使いきる(使うことができる→大分弁)」といえ
ば、そのお爺さんが、まだまだ元気なことの判断の基準になります。

 また、「○○家の若嫁さんは草刈り機を使いきるんヨ」といえば、田舎に溶け込んで
頑張っている若嫁さんのほめ言葉になります。我が女房も、いつの頃からか、草刈り機
の使い手になっております。

 ところで、家や田圃や畑の周囲の草は、各自の家の責任で刈りますが、道の草刈りは
地区民総出の奉仕作業となります。8月のお盆前の日曜日に、町内一斉の≪道路愛護
デー≫があります。それぞれの地区の決められた範囲を、草刈りやゴミ拾いをして道を
きれいにします。半日で済む地区もあれば、丸一日かかる所もあります。

 この道路清掃作業が、過疎と高齢化で、人手不足のために困難になってきた地区もあ
ります。そんな地区ほど、道は長く、夏草もより多く茂る所なのです。

 地区民は、できる範囲で、少しずつ、何日もかけて≪道普請≫をします。いつまでも草
刈りの終わらない道を通るたびに心が痛みます。     (住職・筆工)

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